12/14(水)は「ストスマ25周年スペシャル!」の記事はひとつ下 です
昨日、こんな記事がありました。
このような論調の記事は似たようなものはあったものの、意外に無かった興味深い内容なので紹介いたします。
【 メンバーの確執よりも重い!SMAPロスを招いた「談合」という歪み 】
田中秀臣
コチラ iRONNA
SMAPは楽しく感動的で、また時に波瀾万丈でもあり、そしてなにより平成という時代をともに生きてきたという実感がもてるただ一つといっていいアイドルだ。そのSMAPの5人が揃う姿をみることが、まもなくなくなってしまう。
実際には、『SMAP×SMAP』の収録が終わったことで、我々が見ることのできるのは、少し前の5人の姿でしかない。5人そろったSMAPの姿を、もうライブやテレビの生番組で見ることができないのだ。もちろん紅白歌合戦への電撃的な出場があるかもしれない。だが、その可能性は絶望的とも報じられてもいる。
どんな形でもいいので、彼らの「今」の姿、5人そろった現在を一目でも見たいというのは、多くの国民の願いではないだろうか。
できれば5人がお互いに笑顔を交わし合う姿が一瞬でもあれば、それは本当に幸福なエンディングではないか。もちろん終わりであってほしくはない、再び結集してほしい、いまでも解散を撤回してほしい、というのは筆者を含めた圧倒的多数のSMAPファンの偽りなき心境だろう。
最近では、SMAPがアイドル市場から喪失することの経済効果を聞かれることが多い。経済学者なのでこのマスコミの依頼に答えることは義務だと思っているので数字をあげている。ただそのときでも、数字では表せないファンの感情を考慮することが重要だと指摘している。実際にSMAPが喪失することによる心理的な負担は、人によりけりではあっても、かなりのものになると思っている。それだけSMAPは平成に生きる人たちの、個々の人生の中にしっかりと根を張った「物語」だった。
ひとまずSMAPの経済効果を考えてみる。年間でどのくらいの金額を稼ぎ出しているのか、簡単に推計してみよう。売り上げは、ライブの収入、グッズの販売料、ファンクラブの会費、CDやDVDの販売料、テレビやCMなどの出演料、に大別されるだろう。これらの数字をすべてまとめると、SMAPは潜在的に年間約211億円を稼ぎ出すことができるグループだと思われる。
では、SMAPが喪失することでこの211億円の支出がすべて消えてしまうのだろうか。211億円(一説には600億円という数字もある)がSMAP喪失の経済的損失なのだろうか。答えはノーである。確かにSMAPへの支出は211億円から急激に減少するかもしれない。もちろん彼らが解散した後も、その関連商品は売れ続けるかもしれない。そのため、解散後もSMAPへの支出がゼロになることはありえない。
さらにより経済学的にみると、人々の予算と消費性向が一定であれば、そのうちSMAPへの支出が減少しても、その他のアイドルや娯楽、財・サービスへの支出に振り向けられることになる。このときSMAPへの支出が消滅しても、経済全体での消費には影響を与えないことになる。ちなみに消費性向とは、所得のうちに消費が占める割合である。
ただ筆者はこの経済学的説明は不十分だと考えている。そこには「失望効果」が含まれていない。SMAPのファンの人たちは実に活動的だ。ライブやイベントに出かけることはもちろんのこと、昨年の事務所からの「独立」報道の際や今回の解散に際しても、オリコンチャートの上位にSMAPの名曲がランクインするなど、ネットなどを利用した「社会参加」型の運動をすることにも熱心である。
さらにこのSMAPロス効果をそもそももたらしたものは何かを考える必要がある。つまり、なぜSMAPは解散に追い込まれたかということである。メンバー間の確執を伝えるのが最近のメディアの常とう手段であるが、それは筆者からすると、問題の本質から意図的に論点をずらしているように思える。
ジャニーズ関連の経済規模は、SMAPや嵐、関ジャニ∞やKis-My-Ft2なども加えると約1000億円になると、筆者は推計している。おそらく日本の芸能界でも屈指の経済規模を誇るものだ。他方で、このアイドル市場最大規模ともいえる経済効果は、負の側面をもっている。ジャニーズ事務所のメンバーに対する報道姿勢が、「御用記者」と「暴露記者」の両極端しか存在しないことは、アイドル批評の世界では既知の事実であった。つまり客観的な批評が成立しがたい世界なのだ。
暴露記者」の存在は、実はジャニーズについての報道が「御用記者」が中心になってしまっていること裏返しだ。「御用記者」といっても、実際に事務所側が何かを直接コントロールしているのではない。ジャニーズを批評する上で、多くのメディアが自ら「“事務所のあり方”に触れるな」などと事前に注意を与えることが多い。いわゆる自主規制だ。筆者も昨年の「独立」問題から今回の解散まで、この種の注意を何度も言われたことがある。
またSMAP解散報道が、あたかも事前に示し合わせたように、各スポーツ紙などで一斉に行われた「談合」的事実も周知のことだろう。メディアのジャニーズ事務所への「配慮」は極端に思える。他方で、メンバー個々への人間関係に焦点をずらすことで、事務所とメンバーとの対立は報道の場から消えてしまっている。非常にアンフェアな状況に思える。
さらに日本の芸能界特有の構造的問題がある。これはジャニーズ事務所固有の問題ではない。日本のアイドルやタレントたちが事務所と揉めると、多くの場合、その後の芸能界から「干される」ことになる。事務所とアイドル・タレントが(法的な問題も含めて)揉めても、他のテレビやラジオなど他の企業には一般的には関係のないことだろう。もし揉めていることが(媒体イメージを損なうなどで)問題であるならば、アイドルやタレント側だけではなく、その事務所自体への仕事の依頼も取りやめるのがまだしもフェアだ。だが、実際にはアイドル側しか「干される」ことはない。
例えば、国民的なブームになったNHK朝ドラ『あまちゃん』の主役を演じた能年玲奈(現在の芸名:のん)にかかわるケースはこの典型だ。彼女の所属していた旧事務所との確執が報道され、それが現在も尾を引いていて、テレビやラジオなどへの出演が抑制されてしまっているというものだ。実際に彼女に言及することを自粛するように求められたメディア出演者の証言もある。